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奈良で地域創造学を学ぶ

奈良県立大学は、前身の奈良県立短期大学、奈良県立商科大学から数えると70年を超える歴史を持ち、2001年に奈良県立大学として地域創造学部を設置し今日に至っています。短期大学から数えれば8000名余りの社会科学系の優秀な人材を社会に輩出してきました。

「奈良の再発見を通して日本と世界に貢献する」を建学の精神に掲げているように、本学の地域創造学部での学びは、奈良というキャンパスがあるこの地域だけでなく、全国、そして世界での貢献まで視野に入れたものです。地域系学部は全国の国公私立の大学にもありますが、この奈良で地域創造学を学ぶことを限られた字数の中で考えてみましょう。

一般に奈良のイメージと言えば、平城京や東大寺の大仏など奈良に都が置かれていた時代やその時代に造られた文化財などの観光資源に集中しています。シルクロードにつながっていた都では、国際交流が盛んであっただけなく、外国人の登用も盛んに行われるなど、わが国の歴史の中でもっともグローバルな時代だったと言えるでしょう。その上に、奈良は首都でなくなったあと1200年以上の時が過ぎても、有形無形の文化が地域の中で継承され今日まで活用されている世界的に見ても稀な地域です。

近年SDGsをはじめとする持続可能性があらゆる分野において重要なテーマになっています。この持続可能性を考える上で時間軸の設定は重要なポイントになります。私たちの社会のシステムの多くは、通常数年からせいぜい10年程度の中期的な時間軸を基準に動いています。SDGsでは、21世紀半ばとか、21世紀末時点、つまり自分たちの子や孫の世代まで見越した長期の時間軸を設定しています。一方、奈良で地域を学ぶと、先に述べたように意識しなくても時間軸は1000年単位になってきます。時間軸の長さは、奈良で地域創造学を学ぶ上で大きなアドバンテージのひとつでしょう。

近年、社会は複雑化し、人々の価値観が多様化し、予測不能な時代になったと言われています。このような時代、社会課題の解決には正解がなく、多様な価値観がぶつかり合う中、どう折り合いをつけていくかが重要になっています。そのためには、特定の分野だけでなく、あらゆる学術分野を総動員する必要があります。本学の地域創造学部には、様々な専門性を持った教員が人文科学、社会科学だけでなく、建築や環境や情報といった文理融合領域にまで配置され、多様な知が集い新たな価値を創出する「総合知」を生み出す教育研究環境が整備されています。

奈良県立大学では、今後も一層の教育研究環境の充実を図り、地元奈良と、さらには日本と世界の諸課題に総合知を持って貢献していきたいと考えています。


奈良県立大学学長 尾久土 正己

おきゅうど?まさみ/ 1961年生まれ


1984年 学校法人雲雀丘学園中高等学校教諭(理科、物理)
1990年 兵庫県立西はりま天文台公園研究員
1995年 和歌山県美里町立みさと天文台天文台長
2002年 佐賀大学大学院工学系研究科 博士(後期)課程修了
2003年 和歌山大学学生自主創造科学センター教授
2008年 和歌山大学観光学部教授
以降、学長補佐(教育改革担当)、副学部長、評議員、学部長、大学院観光学研究科長を歴任
2023年 和歌山大学理事(学生?研究?連携担当)?副学長
2024年 4月から奈良県立大学学長を務める
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